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六月は花嫁の季節④ [Le premier épisode]

「いいなぁ、技術は……家庭科なんか浴衣だよう?どうせなら打掛とか縫いたいよねぇ」
「私振袖がいい」
「そう?黒留袖の方がよくない?」
きゃいきゃい現れたのは板垣、藤原、梧桐だ。打掛が板垣木綿、振袖が藤原白菊、黒留袖が梧桐鳳梨。彼女ら三人が言いたいのは浴衣を難しいから縫いたくないということではない。あいつらは打掛だろうが振袖だろうが留袖だろうが縫えるに違いないからだ。
「材料余ってるから何か作れよ。いい値段で売れるぜ」
蘇鉄が硝子の切れ端をぴらぴらと振ってみせる。
光り物に目のない女性陣がわっと目を集める中、弁当をもそもそ食いながら梶が冷徹に言い放った。
「あんまり大物作っちゃダメよ。価格帯を上げたら売れ残るわ」
ついついマニアックな技巧に走りがちの俺達に常に制動をかけるのが梶の役割でもある。俺達八人の誰が欠けても営業部は成り立たないが、梶がいなければ確実に売れる値段のものは作れない。
「とすると小物入れ程度のものしか出せないか。オール硝子のアクセサリーなんか重いだけだしな」
蘇鉄の言う通り、ステンドグラスで作ったコサージュなんか重くてつけた服が撓んでしまうだろう。俺達の顧客は所詮高校生ばかりだ。時折混ざる教師共が少し大物を買っていってくれるが、高校生の購買意欲は自分自身にしか向いていないからインテリアなんかには目が向かない。あーあ、蟹江のナイトランプなんか物がいいから、俺達がつける値段で売ったら大大大特価なんだけどなぁ。
「蟹江くぅん、トビーが妄想突っ走ってるよぅ~」
「板垣、トビーのあれが無いと営業部は成り立たないから」
……蟹江に鷹揚にフォローされてしまった。なんか恥ずかしい。つーか、誰にフォローされるより蟹江にやんわりフォローされるのが一番恥ずかしいのではなかろうか。


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