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六月は花嫁の季節③ [Le premier épisode]

「蘇鉄っつぁんは?」
「多分まだ工作室じゃね?」
俺達手芸部には男は俺を含めて3人だけだ。完成度の高い人造自然体、蟹江棕櫚。俺、飛永蓮。それと今昼前の授業でステンドグラスを嬉々として作っていると思しき日浦蘇鉄。きっと工作室で作業が速いのをいい事に何人かにひとつしかない半田鏝をひとつ独占しているに違いない。
「……あれは面白いな」
滅多に感情をそのアルカイックスマイルの水面以上に出さない蟹江だが、ものを作ることとなると多弁になり、表情が見える。
「蟹江はどんなの作っているんだ?」
「俺?」
「蟹江のステンドグラスはやたら乙女チックだぜ」
硝子の破片をを籠に纏めて蘇鉄は視聴覚室へやってきた。俺の想像に反し、授業中は硝子の切り出しに専念し、銅テープを午後の授業の内職にするつもりのようだ。そういえば蘇鉄は硝子工芸が得意だった。ウキウキ加減は俺や蟹江の比でないだろう。
蘇鉄の言葉は俺達三人が最も嫌う言い回しに近い表現だが、敢えて蘇鉄が使うのだから余程愛らしいデザインが実現できているに違いない。
「ペブル硝子を……わーかったよ、そんなに睨むな蟹江ぇ」
「花模様の吊り下げランプだよ」
蟹江は事も無げに一言で言い切ったが、蟹江のことだから何らかの仕掛けがあるに違いない。一件普通、実質は中身が濃い。それが蟹江の作品だ。
「トビーの小鳥の壁面ランプ、あれはよくできているね」
俺の課題もランプだが、下底の方が短い台形で、絞り出し袋よろしく丸まっている壁際設置用ナイトランプだ。曲面に合わせて小鳥のパーツも反らせるという曲芸をやってのけたのは俺的には最高水準だが、蟹江棕櫚や日浦蘇鉄の芸の細かさに比べたら下の下の下。卑屈になっちゃうぞ。
「あれ、半田を黒染めするの?」
「ブラックパティーナか……面倒だな」


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