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六月は花嫁の季節① [Le premier épisode]

 梅雨時だというのに全く雨が降らない。四国では渇水しているなどというニュースが流れている。ここは視聴覚室。顧問の明口先生が相談があるというから待っているのだが、一向に来やしない。小鳥遊が暇を持て余してテレビをつけたらこの辛気臭いニュース。尤も来ないのは明口だけでなく、他の手芸部のメンバーも来ないのだから納得行かない。そんなに俺飛永蓮と小鳥遊あんが暇なのか。そんなことはないそんなことはない。昨日始まったばかりの食堂の夏限定メニュー、冷やし中華の魅力を振り切って俺はここにいるんだからな。
「おなか減ったよトビー……」
「俺だって減ったよ」
「喉渇いた」
「俺の分も買ってきて」
……不毛だ。何故来ない、明口以下の連中は。誰より兎も角、明口の召集だというのに蟹江が来ないのが納得行かない。異常ですらある。実は本人は必死で隠しているつもりらしいが、俺達『営業部』にはバレバレだ。明口は教師、蟹江は高二生だから所詮憧れとか気の迷いみたいなもの、友情というより人情でかなり生温い目で見守っている。
「蟹江君来ないね」
小鳥遊も同じことを考えていたらしい。
「イの一番に来ると思ったのに」
「明口の名前だけで素っ飛んで来る奴なのにな」
蟹江棕櫚は無駄に自然体な性質で、一歩引いたようなスタンスでいることが多い。何かと率先してやるタイプではないが、こいつがいないと物事が滞ってしまう、という位置にいることが多い。程よく日焼けなどしてスポーツ好きの癖に意外とちまちました作業が好きというのは奴の得意分野が金属加工だということで頷ける。
「何言われるか見当ついてるからじゃない?」
弁当持参で入ってきたのは梶風信子(かのこ)だった。ちゃっかりしてやがる。
「かのちゃん、明口せんせの用事が何だか知ってるの?」
「まぁね」
「蟹江君ががっかりする系?」
「おそらくね」
梶は小鳥遊に返事をしながら弁当をひろげつつき始めた。梶は妙に情報通である。何故新聞部に所属していないのかと思うくらい情報が早く、正確だ。その梶が言うのだから間違いあるまい。蟹江ががっかりするような話?梶と小鳥遊はしたり顔で頷き合っているが、俺にはぴんとこない。
「トビーは鈍ちんね」
鈍い言われてしまった。反撃をせねばと口を開きかけたとき、カコッと缶のプルを折り上げる音がした。


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